葉酸は、お腹の赤ちゃんの成長に必要な栄養素として母子手帳にも記載されていることから、妊娠中のママはもちろん妊活中の女性も積極的に摂取するようになりました。
ビタミンB群の葉酸は、葉野菜に多く含まれていることから「緑のビタミン」とも呼ばれています。たんぱく質の代謝にも深く関わる栄養素で、DNAなどの核酸を合成する重要な役割があります。他にもビタミンB12と一緒に血液をつくる働きがあって、貧血や動脈硬化の予防としても注目されています。
妊娠初期は、細胞分裂を活発に繰り返しながら脳や神経などの重要な部分がつくられる時期です。この時期にしっかり葉酸を摂ることで、無脳症や神経管閉鎖障害などのリスクを軽減してくれることが分かっています。
葉酸は赤ちゃんのためというイメージがありますが、実は妊活中の男性が摂取することで妊娠する確率を高めたり、男性不妊を予防することがわかっています。
男性不妊の原因とは?
これまで不妊の原因は女性ばかりに向けられていましたが、妊活中のカップルの約半数は男性にも原因があることがわかっています。
男性不妊は大きく4つのタイプに分かれます。
乏精子症(ぼうせいししょう)
乏精子症は精液の中に健康な精子が少ない状態です。
病院の精液検査では、精子の濃度や運動率、頭や尾の部分に奇形がないかなど精子の状態や、精液に含まれる白血球の数で精嚢や前立腺に炎症が起きていないかを調べます。
WHO(世界保健機関)で定めている基準の値をもとに総合的に判断されます。
最近の研究では、10人に1人の方が精子に何らかの問題を抱えていることがわかっています。
無精子症
無精子症は精液の中に精子がいない状態です。
精子が作られていても通り道が塞がってしまっている「閉塞性」と、精子自体が作られていない「日閉塞性」があります。
閉塞性の無精子症の場合は手術することで普通のご夫婦と同じ確率で自然妊娠することができます。非閉塞性の無精子症の場合は、先天的なものか後天的なものか原因によって治療法が変わります。
精子無力症
精子無力症は乏精子症の判断基準にもなる精子の運動率が低い状態です。
前進する精子の数が50%未満だったり、高速で前進する精子が20%未満の場合に診断されます。運動率については正確に測定するのが難しく、測り方の誤差や精子を採取した時間によって違う結果が出ることがあります。
勃起障害
勃起障害は必要な場面で勃起できない、勃起が続かない状態です。
プレッシャーやストレスなど緊張状態では勃起しづらく、排卵前後のタイミングの時だけ勃起障害になってしまう男性もいます。アダルトビデオを見るなど、性的興奮があれば勃起できると思われていますが、男性の意志でどうにもできない精神的なものですので、心も体もリラックスすることが大切です。
精子の質にも葉酸が不可欠?
男性不妊の原因で一番多いのが、精子の数や運動率の低下、奇形率の高さなどの乏精子症です。
精子は「精祖細胞」と言う細胞です。細胞はたんばく質から作られますが、その元となるのが20種類のアミノ酸です。
たんぱく質の種類を間違えずに作るためには、アミノ酸の組み合わせの設計図となるDNAをきちんと伝える必要があります。
そこで葉酸の出番です。葉酸にはたんぱく質の代謝を促したり遺伝子情報のDNAを正しく伝える働きがあります。女性の卵子だけでなく、正常な精子があってこそ受精率が高くなり健康な赤ちゃんを授かることに繋がります。
アメリカのカリフォルニア大学の研究チームが、男性の葉酸摂取量と染色体異常の精子ができる割合を比較して関係性を調査しました。
その結果、葉酸を摂取している男性の精子には、葉酸を摂取していない精子に比べて奇形や染色体異常の割合が20~30%も低いことがわかりました。
精液検査で基準となる最低限の値
検査項目 | 基準値 |
精液量 | 1.5ml以上 |
精子濃度 | 1,500万個/1lm以 |
精子の運動率 | 40%以上 |
正常形態精子 | 4%以上 |
総精子数 | 3,900万個以上 |
白血球数 | 100万個/1ml未満 |
上の表は、治療が必要となるかの指標です。
精液検査の結果は、睡眠不足やストレスなど体調に影響されやすいため1回の検査ではわかりにくいですが、精子の数や運度率によって妊娠の確立が左右されますので、排卵日の体調は意識して欲しいですね。
男性は、1回の射精で1億~4億個の精子が放出されますが、卵子の周囲までに辿り着けるのは数百個と一気に減ってしまいます。その中から卵子と受精できるのはたった1個ですからすごい確率です。
健康な男性の精液にも1~4%くらいは染色体異常の精子が混ざっています。染色体異常の精子は卵子にたどり着くのが難しく、卵子と巡り会えても受精できなかったり、染色体異常による化学流産してしまうことも。
葉酸は細胞分裂を活発にして育つ赤ちゃんのために妊婦さんへの摂取が推奨されてきましたが、精子の質にも欠かせない栄養素なんです。
男性に必要な葉酸はどのくらい?
精子は卵子と違い次々と新しく作り出されるため、正しい情報の細胞を作るためにも葉酸の働きが欠かせません。妊活中の男性に必要な葉酸は、1日に240μgと女性の半分程度。
精子は3ヵ月かけて作られますので、質の良い精子のために男性は3ヵ月以上続けて摂るようすすめられています。
効果的な葉酸の摂り方は?
葉酸は、葉野菜に多く含まれてるビタミンです。
葉酸を多く含む食品
【 ほうれん草・レバー・枝豆・アボカド・焼き海苔 】
葉酸は水に溶けやすいビタミンですので、水洗いや加熱調理による損失が大きく調理法によっては約半分にまで減ってしまいます。
サプリメントで効率的に摂取する場合は、葉酸の吸収や働きを助ける役割があるビタミンB6やB12が含まれているかがポイントです。
まとめ
男性不妊の治療はまだまだ確立されておらず、漢方薬やビタミン剤、血流改善薬など主流ですが、普段の生活のなかで少しでもできることがあれば積極的に取り組んでいきたいですね。
男性も女性も葉酸を摂ることで妊娠率を高め、産まれてくる赤ちゃんを脳障害から守ります。葉酸は普段の食事だけでは不足しやすい栄養素ですので日頃から意識して摂るようにしましょう。